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一般的な健康とウェルネス

腰痛について

腰痛は、世界中で最もよくある不調のひとつ。ほとんどの人が人生のどこかで経験します。まるで「招かれざる客」のように、ある日突然現れて長居し、生活の楽しさを奪ってしまう存在です。ですが朗報です!たいていの腰痛は深刻な病気によるものではなく、セルフケアや姿勢改善、適度な運動で改善が見込めます。

腰痛はどのくらい多い?:

腰痛はとても身近です。生涯で約80%の人が一度は腰痛を経験するといわれています (Hartvigsenら, 2018)。実は「仕事を休む理由」のトップランクにも入っています (Maherら, 2017)。数週間で改善することが多いですが、続編のように再び現れることも少なくありません。

腰痛のよくある原因:

腰痛は日常のささいなことからも起こります。

  • 筋肉や靭帯の負担:重い物を持つ、急なひねり、あるいは若いつもりの無理な動き。

  • 不良姿勢:デスクワークで猫背、スマホでうつむきすぎ。

  • 運動不足:筋肉が弱くなり、背骨のサポート力が低下。

  • 加齢による変化:背骨や椎間板の自然な老化。いわば「背骨の白髪」。

  • ストレスや緊張:心のストレスは体の緊張として腰に出ることも。

 

多くは「非特異的腰痛」と呼ばれ、はっきりした病変は見つからないケースが多いのです (Hartvigsenら, 2018)。

腰痛を予防・改善するために:

日常でできる予防ポイント

  • 体を動かす:背骨にとって運動は「潤滑油」。

  • 体幹を鍛える:強い体幹は自然のコルセット。

  • 良い姿勢を保つ:耳・肩・腰を一直線に。ヒーローの立ち姿をイメージ。

  • 正しい持ち上げ方:膝を曲げて持ち上げ、腰をねじらない。腰はクレーン車ではありません。

  • ストレス管理:深呼吸やリラックスで筋肉の緊張もやわらぎます。

 

腰にやさしい簡単ルーティン

(体調に合わせて行い、不安がある場合は専門家に相談してください)

  • Cat-Cow Stretch(5〜10回):四つ這いで背中を反らしたり丸めたり。まさに猫と牛のモノマネ。

  • Pelvic Tilt(10回):仰向けで腰を床にやさしく押し付ける。

  • Knee-to-Chest Stretch(左右20〜30秒):仰向けで膝を胸に引き寄せる。

  • Bird Dog(左右8〜10回):四つ這いで反対の手足を伸ばす。猟犬ポーズ、ただし吠える必要なし。

  • Bridge(10回):仰向けで腰を持ち上げて数秒キープして下ろす。お尻が感謝します。

 

豆知識:定期的な運動は腰痛の再発や強さを減らす効果があると研究で示されています (Qaseemら, 2017)。

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セルフケアと理学療法:

腰痛が「赤旗(危険なサイン)」を伴わない場合は、早めの動き出しとセルフケアが回復を助けます。

 

初期セルフケア(エビデンスに基づく)

  • 動き続ける(寝すぎない):安静にしすぎると回復が遅れる (Maherら, 2017)。

  • 冷却と温熱:最初の48時間はアイシング、その後は温めて血流改善 (Frenchら, 2006)。

  • やさしいストレッチ:骨盤傾斜や膝抱えストレッチなど。

  • 姿勢を意識:サポートのある椅子で、長時間同じ姿勢を避ける。

  • ウォーキング:10〜15分のゆっくり散歩でこわばり解消 (Qaseemら, 2017)。

 

理学療法の役割

  • 個別運動プログラムで筋力や柔軟性を回復。

  • 徒手療法で筋肉や関節の硬さを軽減。

  • 動作や姿勢の指導で再発予防。

  • 段階的な復帰プランで仕事やスポーツに無理なく戻る。

 

エビデンスでは、運動療法と教育が「非特異的腰痛」にもっとも効果的とされています (Delittoら, 2012)。

医師に相談すべきとき

数週間経っても改善しない、繰り返し痛む、生活に支障がある場合は理学療法士や医師に相談を。早めの対応が慢性化を防ぎます。

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すぐに受診が必要なサイン(赤旗症状):

  • 尿や便のコントロールができない

  • 両足の強いしびれや脱力

  • 大きな事故や転倒後の腰痛

  • 発熱や原因不明の体重減少を伴う腰痛

  • がんの既往があり新たに腰痛が出現

 

これらがある場合は、すぐに医師に相談してください (Chouら, 2016)。

まとめ:

腰痛はとても一般的で、多くは深刻ではありません。セルフケアや姿勢、運動の工夫で予防や改善が可能です。赤旗サインを見逃さず、必要なときは専門家に相談しましょう。背骨はサプライズは苦手ですが、日々の地道なケアには喜んで応えてくれます。

参考文献

  • Chou, R., Qaseem, A., Snow, V., Casey, D., Cross, J. T., Shekelle, P., & Owens, D. K. (2007). Diagnosis and treatment of low back pain: A joint clinical practice guideline. Annals of Internal Medicine, 147(7), 478–491.

  • Delitto, A., George, S. Z., Van Dillen, L. R., Whitman, J. M., Sowa, G., Shekelle, P., ... & Godges, J. J. (2012). Low back pain. Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy, 42(4), A1–A57.

  • French, S. D., Cameron, M., Walker, B. F., Reggars, J. W., & Esterman, A. J. (2006). Superficial heat or cold for low back pain. Cochrane Database of Systematic Reviews, 2006(1), CD004750.

  • Hartvigsen, J., Hancock, M. J., Kongsted, A., Louw, Q., Ferreira, M. L., Genevay, S., ... & Woolf, A. (2018). What low back pain is and why we need to pay attention. The Lancet, 391(10137), 2356–2367.

  • Maher, C., Underwood, M., & Buchbinder, R. (2017). Non-specific low back pain. The Lancet, 389(10070), 736–747.

  • Qaseem, A., Wilt, T. J., McLean, R. M., & Forciea, M. A. (2017). Noninvasive treatments for acute, subacute, and chronic low back pain: A clinical practice guideline. Annals of Internal Medicine, 166(7), 514–530.

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