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リンパ浮腫の管理と治療

リンパドレナージ（MLD）

リンパ浮腫と付き合っている方なら、リンパドレナージ（MLD）という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。これはとてもやさしいマッサージで、腫れた部分から余分なリンパ液を流すのを助けます。強い圧をかけるマッサージとは異なり、皮膚の表面を軽く動かすのが特徴です。

ここでは、MLDとは何か、研究で分かっていること、そして自宅でできるセルフMLDについてご紹介します。

リンパドレナージ（MLD）とは？:

  • MLDは1930年代にDr. Emil Vodderによって開発されました。

  • やさしい皮膚のストレッチ動作で、リンパ液を健康なリンパ経路へ導きます。

  • 深部マッサージではなく、強い圧・もみほぐし・オイルは使いません。

  • 複合的理学療法（CDT）の主要な要素のひとつです（International Society of Lymphology [ISL], 2023）。

研究で分かっていること:

  • 症状の改善:

    • 多くの人が、MLDの後に重だるさ・張り感・不快感が和らぐと感じています（McNeely et al., 2012）。

  • 軽度〜中等度の浮腫に有効:

    • 大規模レビューでは、MLDは特に乳がん後の軽度〜中等度リンパ浮腫に追加効果をもたらす可能性があるとされています。

    • ただし、中等度〜重度のケースでは、圧迫療法に追加しても大きな改善は得られないことが分かっています（Ezzo et al., 2015; Moseley et al., 2007; Thompson et al., 2021）。

  • CDTと併用が最も効果的:

    • MLDは圧迫、運動、スキンケアと組み合わせることで最も効果を発揮します（ISL, 2023）。

  • 生活の質:

    • ​むくみの減少が小さくても、動きやすさや快適さ、リラックス感が高まったと報告されています（Yamamoto et al., 2020）。

セルフMLD：自分でできるやさしい手技:

セルフMLDは、認定リンパ浮腫セラピストから指導を受けて学ぶ簡略化された方法です。

 

基本ルール

  • 強く押さず、皮膚をやさしく伸ばす程度の圧にとどめます。

  • ゆっくりと一定のリズムで行います。

  • いつもリンパ液を首・腋窩・鼠径部などの健康なリンパ節方向に導きます。

 

腕のリンパ浮腫（乳がん術後など）の場合

  1. まず首と健康な側の腋窩を円を描くようなやさしい手技で「通り道」を開きます。

  2. 胸や背中を、健康な側の腋窩に向けてなでるように流します。

  3. 肩から肘、手首、手の順に、皮膚を軽く伸ばすように動かします。

  4. 次に逆方向で、手→手首→肘→肩→健康な側の腋窩へと流します。

  5. 最後に、リンパ液を健康な腋窩や首の方へ上向きに流すことで、中心に戻る通り道を完成させます。

 

脚のリンパ浮腫の場合

  1. まずお腹や鼠径部をやさしい円やすくい動作で準備します。

  2. 太もも→膝→ふくらはぎ→足の順に下に向かってストロークします。

  3. その後逆方向で、足→ふくらはぎ→太もも→鼠径部へと流します。

  4. 最後に、リンパ液を鼠径部からお腹方向へ上向きに流すことで、中心のリンパ経路に戻します。

 

この「中心から始める → 末端へ → 再び中心に戻す」という流れが、MLDを効果的にするポイントです。

安全に行うために:

  • 感染（蜂窩織炎：赤み・発熱・急な痛み）がある場合は行わないでください。

  • 治療されていない心不全・腎不全・活動性のがんがある場合も避けてください。

  • MLDは圧迫療法の代わりにはなりません。必ず弾性着衣や包帯と併用することが大切です（ISL, 2023）。

  • 初めて行うときは、認定リンパ浮腫セラピストに正しい方法を習うことをおすすめします。

まとめ:

  • MLDはやさしい皮膚マッサージでリンパ液の流れを助けます。

  • 軽度〜中等度のリンパ浮腫で効果が高く、重度では追加効果が少ないとされています。

  • 複合的理学療法（CDT）の一部として行うことで最も効果的です。

  • セルフMLDは有効ですが、正しい方法を学ぶことが重要です。

  • 圧迫、運動、スキンケアはリンパ浮腫管理の基本となります。

科学的参考文献（Scientific References）:

  • Ezzo, J., Manheimer, E., McNeely, M. L., Howell, D. M., Weiss, R., Johansson, K. I., ... & Bily, L. (2015). Manual lymphatic drainage for lymphedema following breast cancer treatment. Cochrane Database of Systematic Reviews, (5).

  • International Society of Lymphology (ISL). (2023). The diagnosis and treatment of peripheral lymphedema: 2023 Consensus Document of the ISL. Lymphology, 56(1), 1–44.

  • McNeely, M. L., Peddle, C. J., Yurick, J. L., Dayes, I. S., & Mackey, J. R. (2012). Conservative and dietary interventions for cancer-related lymphedema. Current Oncology, 19(4), e271–e282.

  • Moseley, A. L., Carati, C. J., & Piller, N. B. (2007). A systematic review of common conservative therapies for arm lymphoedema secondary to breast cancer treatment. Annals of Oncology, 18(4), 639–646.

  • Thompson, B., et al. (2021). Manual lymphatic drainage in mild vs. moderate-to-severe lymphedema: Evidence summary. Medicine (Baltimore), 100(31), e26844.

  • Yamamoto, T., Yamamoto, N., Hayashi, A., Koshima, I., & Narushima, M. (2020). The roles and evidence of complex decongestive therapy and manual lymphatic drainage for lymphedema. Annals of Vascular Diseases, 13(1), 10–16.

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