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子供の健康とウェルネス

複数スポーツ vs.
単一スポーツの取り組み方

子どもが1つのスポーツに集中する「早期専門化」は、よく議論されるテーマです。
でも、それは本当にパフォーマンスを高めるのでしょうか? それとも、ケガや心の負担を増やすのでしょうか?

保護者・コーチ・若いアスリート自身が、早期専門化が与える影響(運動能力・ケガのリスク・メンタル面)を理解することが大切です。

 

このセクションでは、科学的な視点からこの問題を掘り下げ、子どもたちがスポーツでも人生でも長く活躍できる道を一緒に考えていきましょう。

複数スポーツに取り組むメリット

複数のスポーツに取り組んでいる子どもは、全体的な協調性、バランス感覚、運動能力がよりよく育ちます。「Youth Sports: Why It’s Better to Be a Multi-Sport Athlete」などの研究によると、複数スポーツの選手は、使いすぎによるケガや燃え尽き症候群のリスクが低く、スピードや敏捷性の向上も見られると報告されています。

単一スポーツへの早期専門化のリスク

単一スポーツへの早期専門化(1年中、1つの競技だけに取り組むこと)

  • ケガのリスクが高まる
    早期に専門化した子どもは、使いすぎによるケガの発生率が1.5〜2倍に高まると報告されています。(Jayanthi ら, 2015 – The American Journal of Sports Medicine)

  •  燃え尽き・スポーツからの離脱
    感情的な疲労やモチベーションの低下、最終的にはスポーツ自体をやめてしまうリスクが上がります。(Gould ら, 1996;Brenner, 2016 – Pediatrics)

  • 運動発達が偏る -- 1つの競技に集中することで、協調性・敏捷性・適応力などの運動基礎能力の発達が制限される可能性があります。

 

複数スポーツへの参加(Multi-Sport Participation)

  • ケガのリスクを下げる
    複数のスポーツに取り組むことで、同じ部位への過度な負担を避けられ、筋肉群に休息を与えることができます。

   (Bell ら, 2016 – Orthopaedic Journal of Sports Medicine)

  • 長期的なパフォーマンス向上
    複数スポーツを経験した子どもは、総合的な運動スキルが高く、後に専門化しても成功しやすい傾向があります。(Myer ら, 2015 – Sports Health)

  • 燃え尽きの予防--異なるスポーツに取り組むことで練習に新鮮さと楽しさが生まれ、メンタルの疲労を減らす効果があります。

推奨されるスポーツ参加ガイドライン

12歳以下:

  • 年間で2〜3種類のスポーツに参加するのが理想

  • 一度に取り組むのは1つの組織的なスポーツにとどめ、スケジュールの重複や疲労を防ぐ

  • 勝敗や成果よりも、自由な遊びや楽しさを重視する

 

12〜15歳:

希望があれば徐々に専門競技へ移行してもかまいませんが、
低強度の練習やクロストレーニング(他の運動種目による補完)を継続し、
週あたりの組織的なスポーツ活動の時間は子どもの年齢以下に抑えましょう(例:14歳の場合は週14時間以内)。

 

15歳以上:

特定の競技に集中する専門化は可能ですが、
トレーニング量のガイドラインを守り、
必ずオフシーズン(競技のない期間)や休養期間を設けることが大切です。

保護者とコーチのためのまとめポイント

【全体的な推奨事項】

  • 12歳未満での単一スポーツによる通年トレーニングは避けましょう

  • 年間に2〜3種類の異なるスポーツを経験することを勧めます

  • 週に1〜2日は完全休養日を設け、1つの競技につき年に2〜3か月のオフ期間を確保しましょう(身体・心の回復のため)

 

【年齢別の推奨事項】

  • 12歳未満:専門化ではなく、複数のスポーツを楽しむことを優先。
     → 楽しさ・基本的なスキルの習得・燃え尽き予防を重視。

  • 12〜15歳:専門化を始める場合は段階的に進めること。
     → 組織的なスポーツ活動の合計時間は「年齢と同じ時間(週〇時間以内)」に制限。
     → クロストレーニング(他種目の併用)と長期的な成長を意識。

  • 15歳以上:専門化は可能だが、適切に管理することが前提。
     → 休息期間を確保し、オーバートレーニングを防止し、トレーニング量の指針を守ること。

科学的参考文献|Scientific References

スポーツ専門化と使いすぎ障害(Overuse Injury)

  • Bell, D. R., Post, E. G., Biese, K. M., Bay, C., & Valovich McLeod, T. C. Sport Specialization and Risk of Overuse Injuries: A Systematic Review With Meta-analysis. Pediatrics. 2018;142(3):e20180657.

    • 高度に専門化された若年アスリートは、低専門化の同年代に比べて1.81倍の使いすぎ障害リスクがあると報告。

  • Bell, D. R., et al.

    • 中程度の専門化でも、複数スポーツ経験者に比べて1.18倍のケガリスクがあると報告。

 

早期専門化・燃え尽き・スポーツ離れ

  • Myer, G. D., Kosty, J. L., et al. Sport Specialization, Part I: Does Early Sports Specialization Increase Negative Outcomes and Reduce the Opportunity for Success in Young Athletes?Sports Health. 2015;7(2):139–147.

    • 早期専門化は、バーンアウト(燃え尽き)やメンタルへの悪影響と関連していると指摘。

  • “Overuse Injuries, Overtraining, and Burnout in Young Athletes” Pediatrics. 2023;153(2):e2023065129.

    • 集中的な早期専門化は、オーバートレーニングや燃え尽き症候群のリスクを高めると強調。

トレーニング量と年齢のガイドライン

  • IOC(国際オリンピック委員会)コンセンサスステートメント

    • 子どものトレーニング量は「週あたりの時間数が年齢を超えないこと」を推奨。

    • 専門化は思春期以降に遅らせるべきとする。

  • AOSSM Sports Medicine Update(Bell ら)

    • 年間8か月以上同じスポーツを行うことが**「早期専門化」と定義される**。

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