子供の健康とウェルネス
ウォームアップが大切な理由
正しく行われたウォームアップは、心拍数と血流を高め、関節の可動域や筋肉の柔軟性を改善し、動きに必要な神経系のスイッチを入れてくれます。
子どもにとっては、バランス力の向上・反応速度のアップ・ケガの予防につながります。
ウォームアップは5〜8分程度を目安に行い、以下のような内容を含めるのが理想的です:
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軽いジョギングやスキップ
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ダイナミックな動き(ハイニー、もも裏キック、腕回し など)
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モビリティ系ドリル(股関節まわし、肩まわし など)
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競技に関連した動き(例:サッカーならドリブル)
科学的根拠: ユースアスリート向けに開発された FIFA 11+ Kids プログラムでは、
ウォームアップの習慣がケガのリスクを50%以上減少させたと報告されています(Rössler ら, 2018)。
動的ストレッチ vs. 静的ストレッチ
動的ストレッチは、筋肉や関節を動かしながら行うストレッチです。関節の可動域(動かせる範囲)を最大限に使って、体を温めたり動きやすくしたりする目的があります。
運動前に行うのに最適で、筋肉を活性化し、柔軟性と動作の準備力を高める効果があります。
🔹 よく使われる動的ストレッチの例:
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ウォーキングランジ
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レッグスイング(脚の振り上げ)
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アームサークル(腕回し)
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股関節モビリティドリル(股関節を大きく動かす体操)
静的ストレッチは、筋肉を伸ばした状態で20〜30秒間キープするストレッチです。
運動後に体が温まった状態で行うことで、柔軟性を高めたり、筋肉の緊張をやわらげたりするのに効果的です。
🔹 よく使われる静的ストレッチの例:
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ハムストリング(太もも裏)のストレッチ
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ふくらはぎのストレッチ
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太ももの前側(大腿四頭筋)のストレッチ
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トライセプスや肩まわりのストレッチ
練習前に静的ストレッチを避けるべき理由とは?
静的ストレッチとは、筋肉を伸ばした状態でじっと保つストレッチのことです。
たとえば、つま先に手を伸ばして30秒間キープするような動きがそれにあたります。
運動後のクールダウンには効果的ですが、運動前に行うと、逆にパフォーマンスを下げたり、ケガのリスクを高めたりする可能性があります。
運動の前に筋肉を長時間伸ばしたままにすると、一時的に筋力や反応の鋭さが低下してしまいます。
その結果、筋肉の収縮が遅くなり、動きの安定性も損なわれます。
これは、スピード・パワー・協調性が求められるスポーツ——たとえばサッカー、バスケットボール、短距離走など——では、特にリスクとなります。
運動前に静的ストレッチを避けるべき主な理由:
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筋力とパワーの発揮が一時的に低下(15〜30分続く可能性)
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反応速度が遅くなり、動作のキレや協調性が落ちる
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関節の安定性が下がり、足首の捻挫などのケガのリスクが増える
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体温が上がらず、神経系の準備も不十分なまま運動に入ってしまう
科学的根拠:
Kay & Blazevich(2012)の研究によると、運動前に静的ストレッチを行ったアスリートは、筋力やスプリントなどのパフォーマンスが最大5%低下することが報告されています。
クールダウン:回復とリセットの時間
クールダウンは、運動で高まった心拍数をゆっくりと下げ、筋肉に血流を促すことで疲労や筋肉痛を軽減する大切なステップです。
また、心を落ち着けるリラックスタイムとしても効果的で、静的ストレッチを組み合わせることで、柔軟性の維持・向上にもつながります。
5〜10分ほどのシンプルなクールダウンでOK。以下のような内容を取り入れてみましょう:
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軽いウォーキングやゆっくりとしたジョギング
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深呼吸やリズムを整える呼吸法
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主要な筋肉を対象とした静的ストレッチ(太もも、ふくらはぎ、背中など)
科学的根拠:Balsalobre-Fernández ら(2016)の研究では、静的ストレッチを取り入れた適切なクールダウンを行うことで、若年アスリートにおける遅発性筋肉痛(DOMS)を有意に軽減できることが報告されています。
科学的根拠/参考文献
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Rössler, R. ほか(2018)
『ユースサッカーにおけるFIFA 11+ Kidsプログラムを用いた傷害予防』
Clinical Journal of Sport Medicine 掲載 -
Kay, A.D. & Blazevich, A.J.(2012)
『静的ストレッチが筋力およびパワーパフォーマンスに及ぼす影響』
Medicine & Science in Sports & Exercise 掲載 -
Balsalobre-Fernández, C. ほか(2016)
『ユースアスリートにおける運動後のリカバリーメソッド』
Journal of Strength and Conditioning Research 掲載