リンパ浮腫の管理と治療
リンパ浮腫は、リンパ系の機能障害によって起こる慢性的なむくみの症状です。手術、放射線治療、がん治療などが原因でリンパの流れが滞ることで発症し、特に腕や脚に腫れ・重だるさ・動かしにくさなどが生じることがあります。
私は認定リンパ浮腫セラピストとして、長年の臨床経験をもとに、リンパ浮腫の症状のコントロール、腫れの軽減、生活の質の向上につながる実践的で分かりやすい情報をお届けしたいと考えています。
リンパ浮腫と診断されたばかりの方も、長期的なケアに悩んでいる方も、このページが皆さんのケアの道しるべとなり、少しでも安心や前向きな気持ちにつながれば幸いです。
トピックス
腕や脚、体の腫れがなかなか引かないことはありませんか?それは単なる“むくみ”ではなく、リンパ浮腫という可能性があります。
リンパ浮腫は、慢性的で誤解されやすい病気ですが、世界中で何百万人もの人が影響を受けています。重い病気ではあるものの、適切な知識とケアでコントロール可能です。そして、早期に気づくことが、生涯にわたる健康の差を生みます。
このページでは、
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リンパ浮腫とは何か
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なぜ起こるのか
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どう対処すればいいのか
をわかりやすく解説します。
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左右どちらか一方だけのむくみや、なかなか引かない腫れは、単なる“水太り”ではなく、リンパ浮腫のサインかもしれません。この状態を放っておくと、悪化してしまうこともあります。
正しく見極めて、早めに対処することが大切です。
特に短伸縮包帯を用いた多層包帯法は、リンパ浮腫治療の初期段階で腫れを減らす「ゴールドスタンダード」とされています(International Society of Lymphology [ISL], 2023; International Lymphoedema Framework [ILF], 2012)。
この実証された方法は、リンパ液を移動させ、皮膚を守り、長期的な維持に必要な弾性着衣(ストッキングやスリーブ)への移行を準備します。包帯療法の仕組みや理由を理解することで、自分の治療に自信を持ち、明確な道筋を描くことができます。
乳がんの手術や治療の後、多くの方が「どんなブラジャーを着ければ快適で、回復に役立つのか?」と悩みます。正しく選ばれたコンプレッションブラは、痛みの軽減や安心感につながり、体が回復していく過程で大きな支えになります。必ずしも全員に必要というわけではありませんが、選択肢を理解し、安全に活用することがとても大切です。
リンパ浮腫のケアには毎日の用品や特別な着圧衣が必要で、最初はとても大変に感じるかもしれません。2024年から、メディケアや多くの保険がこれらのケアをカバーするようになりました。何が対象になるのか、どのような流れで進むのかを理解することで、安心して自分の健康管理に取り組むことができます (CMS, 2024; Lymphedema Advocacy Group, 2024)。
リンパ浮腫治療法案(Lymphedema Treatment Act, 2024年施行) により、メディケアPart Bは着圧衣や包帯などの物品を正式にカバーするようになりました。しかし、現場での適用には詳細な書類作成と多職種間の調整が不可欠です。セラピストは縮小期から維持期までの移行を導き、適切な記録を残すことで患者が必要な製品を確実に受け取れるよう支援します (CMS, 2024; Noridian, 2024; ILF, 2020)。
がん治療のあとに心配される症状のひとつがリンパ浮腫です。リンパ節の切除や放射線治療の有無、切除された数や部位、さらに体重や感染などの要因によってリスクが変わります。リスクを正しく理解し、圧迫着の使用など予防策を知っておくことは、患者さんやご家族にとって大きな安心につながります。
リンパ浮腫と付き合っている方なら、リンパドレナージ(MLD)という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。これはとてもやさしいマッサージで、腫れた部分から余分なリンパ液を流すのを助けます。強い圧をかけるマッサージとは異なり、皮膚の表面を軽く動かすのが特徴です。ここでは、MLDとは何か、研究で分かっていること、そして自宅でできるセルフMLDについてご紹介します。
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