がん治療後のケア
なぜ、がん治療後のケアが大切なのでしょうか?
あなたの回復の旅は、今も続いています。その一歩一歩に、適切なサポートが必要です。
がん治療を終えたことは大きな節目ですが、本当の意味での回復は、その後から始まることも少なくありません。多くの方が、化学療法・放射線治療・手術などが終わったあとも、思いがけない変化に戸惑います:
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「治療が終わったのに、前より疲れやすい」
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「肩が思うように動かない」
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「皮膚が張って重く感じる」
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「もっと元気になっているはずなのに…」
「こんなはずじゃなかった」と思う気持ちは自然なことです。
あなたの感じていることは、現実であり、そして多くの方が経験していることです。
がん治療後の体と心の変化
がんやその治療は、体のさまざまな機能に影響を及ぼすことがあります。
治療が終わったあとでも、多くの方が次のような症状に悩まされることがあります:
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疲労感や思考のもやもや(ブレインフォグ)
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筋力の低下や筋肉の減少
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リンパ浮腫(リンパ系のダメージによるむくみ)
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傷跡による皮膚のつっぱりや、動きの制限
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バランス感覚の低下や歩行の不安定さ
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不安や「また再発するのでは」という恐れ
こうした変化はあなたのせいではなく がん治療によって生じる、ごく自然な影響(副作用)です。
そしてそれは—— きちんと向き合えば、変えていけるものでもあります。
知っておきたい誤解と真実

科学的根拠
がん治療後の運動と理学療法の効果
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Schmitz KH ほか(2019)「Exercise is Medicine in Oncology: Engaging Clinicians to Help Patients Move Through Cancer」CA: A Cancer Journal for Clinicianshttps://doi.org/10.3322/caac.21579
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主な発見: がん治療中および治療後の運動は安全かつ有効であり、疲労・身体機能・生活の質(QOL)を改善する。
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Campbell KL ほか(2019)「Exercise Guidelines for Cancer Survivors: Consensus Statement from International Multidisciplinary Roundtable」Medicine & Science in Sports & Exercisehttps://doi.org/10.1249/MSS.0000000000002116
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主な発見: 構造化された運動プログラムは、がんに関連した疲労、不安、身体機能の低下を軽減する。
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がん関連疲労(Cancer-Related Fatigue)
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Bower JE(2014)「Cancer-related fatigue—Mechanisms, risk factors, and treatments」Nature Reviews Clinical Oncology https://doi.org/10.1038/nrclinonc.2014.127
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主な発見: 治療後も最大40%の患者に疲労が持続。運動療法と認知行動アプローチが最も有効な管理法とされる。
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がん治療後のリンパ浮腫(Lymphedema)
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Cormier JN ほか(2010)「Lymphedema beyond breast cancer: a systematic review and meta-analysis of incidence and risk factors」Cancer https://doi.org/10.1002/cncr.25132
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主な発見: がんの種類や治療法によって異なるが、がん経験者の30~40%にリンパ浮腫が発生している。
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Stout NL ほか(2012)「A prospective surveillance model for rehabilitation for women with breast cancer」Cancer https://doi.org/10.1002/cncr.27476
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主な発見: 早期の理学療法介入は、リンパ浮腫のリスクを低下させ、回復を促進する。
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放射線線維症・瘢痕(ひきつれ)管理
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Koczwara B ほか(2013)「Late effects of cancer therapy: an overview and model for prevention and management」Asia-Pacific Journal of Clinical Oncology
https://doi.org/10.1111/ajco.12033-
主な発見: 放射線治療後の**線維化(硬化・つっぱり)**は一般的であり、多職種による包括的な管理が必要。
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Salvo N ほか(2010)「Prophylaxis and management of acute radiation-induced skin reactions: a systematic review」
Current Oncology https://doi.org/10.3747/co.v17i4.556-
主な発見: 放射線治療による皮膚や軟部組織の損傷に対する予防とケア方法について詳細に検討
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国際的ながん関連ガイドライン
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アメリカがん協会(ACS)「Survivorship Care Guidelines」https://www.cancer.org
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サバイバーの生活を支えるために、リハビリ、運動、生活習慣改善を推奨。
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全米総合がんネットワーク(NCCN)「サバイバーシップ・ガイドライン:疲労・痛み・リンパ浮腫・身体機能」https://www.nccn.org/guidelines/guidelines-detail?category=3&id=1457
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臨床現場で広く使われているガイドラインで、早期のリハビリ介入を推奨。
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